ライソゾーム病の在宅酵素補充療法の実現に向けて

当患者会は、ライソゾーム病指定難病31疾患のうちの11疾患(13疾患)で構成されており、その内訳は、ムコ多糖症9疾患をはじめ、ムコリピドーシス、ガラクトシアリドーシス、GM1-ガングリオシドーシス、GM2-ガングリオシドーシスがある。先天的な遺伝子異常によってタンパク質、糖質、脂質を分解する酵素が欠損・低下することで、分解されるべきものが体内に溜まっていく進行性の病気「溜まり病」である。

私が名誉会長を務める日本ムコ多糖症患者家族の会は約180名の患者の家族で構成されており、ムコ多糖症Ⅱ型が過半を占め、疾患ごとに数人から数十人の割合である。1名だけの疾患もあり、患者数が大きく異なる13疾患が集まった当会は、国内のさまざまな難病の家族会の中でも稀有な存在である。

こんにち、国内ではムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅳ型A、Ⅵ型の4疾患で6つの酵素製剤が承認されているが、2006年10月にムコ多糖症Ⅰ型のアウドラザイムが承認された当時から欧米では在宅酵素補充療法が行われ、国内でも在宅酵素補充療法の重要性が声高に言われるようになっていた。しかし、日本ムコ多糖症の領域は患者数が少ないために治験の症例数が少なく、当会としては、安全性が最優先されるべきであるとの判断から、国への在宅酵素補充療法の要望を控えていた。その後、厚労省が製剤を承認してから安全性を確認していく調査(市販後調査等)を採用し、一定の安全性が確認できた2007年以降、当会は4たび、要望書を提出した。

ファブリー病患者と家族の会を中心としてゴーシェ病、ポンぺ病、そして我々ムコ多糖症の4団体は、共通している課題について、関係当局に要望書を提出している。個々の患者団体が個別に要望するよりも意味は大きいと考えたからである。ファブリー病患者と家族の会としては、昨年の3月に在宅酵素補充療法の要望書を提出し、厚生労働省との折衝を重ねてきた。その結果、「自己点滴注射として審議するため、定期的な見直しを待つように」という難病対策課の回答を引き出すことができた。

この回答を受け、当会とファブリー病患者と家族の会の有志で設立した日本ライソゾーム病患者家族協議会として、あるいは私個人として、在宅酵素補充療法の実現に向けて、当局、専門医、学会と密に連携し、チームメンバーとも頻繁に会議を開き情報収集を行ってきた。

在宅酵素補充療法を導入する上においても情報が共有されていないところが多く、どの窓口で相談すればよいのか、非常に分かりにくい構造になっている。その部分を繋げるためには専門性の高い人材が必要と感じており、保険医が使える薬剤追加の要望においても同じようなことが言える。それは難病に対する各所の怠慢でも無関心でもなく、共有ができないので誰も分からないという構造的な問題なのである。患者会として調整をおこない整理できてきたことが、今回のライソゾーム病8疾患に対する酵素製剤11製剤が、「保険医が投与することができる注射薬の対象薬剤」に追加されたと考えている。

私が、意識こそしていなかったが、結果として情報発出・共有のハブ機能の役割を果たしたことで、当局、専門医の先生方が動きやすい環境を作ることができ、本年3月6日から、在宅医によるライソゾーム病の11の酵素製剤の使用が可能となった。

この間、大阪難病医療情報センター様には貴重なご意見をいただいた。この場を借りて謝意を示すとともに、貴センターが推進する医療コーディネーターは、まさに医療の枠組み、あるいはその枠組みを出て患者・家族の思いに至るまで、非常に重要な役割を担うであろうことを、自らの経験から感じている。

日本ムコ多糖症患者家族の会
秋山武之

日本ムコ多糖症患者家族の会