ライソゾーム病患者の
点滴による酵素補充療法(ERT)への連携支援
これまでわが国では、ライソゾーム病(希少の指定難病)に対する酵素製剤の投与は、医療機関でのみ実施されてきました。患者さんの中には、酵素製剤投与関連反応(発熱、発疹、アナフィラキシー)などを認めるため、注意深い観察が必要とされていました。
酵素補充療法(Enzyme replacement therapy;ERT)は、定期的に一定の時間をかけて点滴静注を行い、また生涯続ける必要があるため、患者さんや保護者、介護者の通院負担は大きなものでした。また、新型コロナウィルス感染に伴い、市中感染が拡大し、院内感染も多くの病院で発生していることから、専門病院でのERTの継続が困難な状況になっていました。
令和3年1月に日本先天性代謝異常学会から、ライソゾーム病8疾患に対する11種類の酵素製剤を「保険医が投与することができる注射薬の対象薬剤」へ追加することの要望がなされ、また投与関連反応も制御可能であることから、令和3年3月に「ライソゾーム病に係る酵素製剤11製剤は、保険医が投与することができる注射薬」となりました。
地域医療機関や在宅医療におけるERTの課題は、専門医療機関による適切な患者選定、専門医療機関と地域医療機関、在宅医、訪問看護師との連携、酵素補充製剤などの供給体制、急変時の受け入れ病院、などです。
大阪難病医療ネットワークは、専門医療機関などで酵素補充療法をされている、大阪在住のライソゾーム病患者さんに対し、難病診療連携拠点病院と難病医療協力病院が協力して、地域医療機関や在宅医療でのERTを推進いたします。このため、大阪難病医療情報センター(大阪急性期・総合医療センター)が窓口となり、患者家族の会と連携して、難病医療コーディネーターが医療連携、酵素製剤などの供給体制などの調整・支援を行います。
保険医が投与することができるライソゾーム病の注射製剤
疾患名 | 一般名 | 販売名 |
---|---|---|
ゴーシェ病 | イミグルセラーゼ | セレザイム静注用400単位 |
ゴーシェ病 | ベラグルセラーゼ アルファ | ビプリブ点滴静注用400単位 |
ポンペ病 | アルグルコシダーゼ アルファ | マイオザイム点滴静注用50mg |
ファブリー病 | アガルシダーゼ ベータ |
ファブラザイム点滴静注用5mg ファブラザイム点滴静注用35mg |
ファブリー病 | アガルシダーゼベータ後続 |
アガルシダーゼ ベータBS点滴静5mg(JCR) アガルシダーゼ ベータBS点滴静35mg(JCR) |
ファブリー病 | アガルシダーゼ アルファ | リプレガル点滴静注用3.5mg |
ムコ多糖症Ⅰ型 | ラロニダーゼ | アウドラザイム点滴静注液2.9mg |
ムコ多糖症Ⅱ型 | イズュルスルファーゼ | エラプレース点滴静注液6mg |
ムコ多糖症ⅣA型 | エロスルファーゼ アルファ | ビミジム点滴静注液5mg |
ムコ多糖症Ⅵ型 | ガルスルファーゼ | ナグラザイム点滴静注液5mg |
酸性リパーゼ欠損症 | セベリパーゼ アルファ | カヌマ点滴静注20mg |